素朴な温泉街が示唆するもの
経済危機はまだ終わりの見えない状況ですが、アメリカはオバマ大統領が「終わりの始まり」といって、大胆な舵取りをおこなっているようです。
一方で、世界第二位の経済大国では、足の引っ張り合いのみという、政局あって政治がないような悲惨な状況です。やろうとしているのが本当に景気回復なのか、単なるアメリカ救済なのかもわかりませんし、苦境に陥っている韓国経済を助けようという余裕など皆無のようです。
韓国人観光客のおかげでなんとか商売が成り立ってきた九州などからも悲鳴が聞こえてきます。唯一、円高のおかげで日本人観光客がたくさん買い物をしてくれる韓国のホテルやブランド品店などが好況だということのようですね。
これでは一方通行になってしまいますから、この6月に開港を予定している「富士山静岡空港」に韓国からの定期便が飛ぶとしても、乗客は行きも帰りも 日本人ばかりになるか、下手をすると日本の不況が今後さらに深刻化して、定期便を飛ばすこともできなくなってしまうかもしれません。4月から、燃油サー チャージが値下げされるそうですが、海外旅行をする余裕のある日本人が、本当にこれから増えてくるのか、その見通しも立たないわけです。
そんな中、旅行をしたり、高級品を買ったりできる富裕層が増え続けているのが中国です。株価が上がらないといった不安材料はもちろんあるんでしょう けれども、中国人はお金の動きに対して敏感で目の利く人が多いので、株が儲からないとなれば株など買わないという行動をはっきり取ってきますから、中国の 実体経済が本当に悪くなっているということではないはずです。
「富士山静岡空港」には、上海便も就航しますので、むしろ中国人観光客が増えてくるのかもしれません。
しかしいずれにしても問題は、静岡県がリピーターを生み出せるかということに帰結するんでしょうね。富士山を見た人が、また見たい、年に一度ぐらい は見たいと思うかどうかわかりませんし、浜名湖や伊豆などの観光地をメインとしたツアーへの需要があるのかどうかもわかりません。
これまで外国人観光客がほとんど訪れていない所であっても、日本人の観光客が減っているから外国人が欲しいということになってきただけで、日本人・外国人を問わず、本当に魅力的な観光地やリゾート地へと発展してきたかどうかは別問題です。
観光というのは、一種の流行産業だとも言われます。昭和30年代、40年代に魅力的だった観光地が、平成の現代になってまだ人々を魅了するとは限りませんし、観光業に携わっている皆さんも、そんなことは百も承知だろうと思います。
静岡市には安倍川の上流、安倍奥の地に、梅ヶ島温泉という古い温泉街があります。旅館と民宿が12軒と日帰り温泉兼食堂が1件あるだけの小さな温泉街ですが、下界からはしっかり隔絶された大自然の中、独特の落ち着いた雰囲気があります。
流行りの「露天風呂付き客室」といった高級なものもありませんし、文豪の愛した部屋もありません。また、特異な景勝地というほどでもありません。時 間も時代も止まったまま、ひっそりとある素朴な旅館には、インターネット接続もありませんし、携帯電話もやっと通じるようになったぐらいですから、そこで 味わえるのはどこまでも、日本の、本来の温泉宿の風情だけなんですね。でもそれがとても純粋なものであるために、また来て落ち着きたいというお客様がある んだと思います。
筆者が外国人観光客に是非紹介したいと思うのは、このような、純粋な日本です。ホテルという名の旅館ではなくて、旅館という名の、いつまでも変わらぬ温泉宿です。
そんな温泉宿には、いつまでもずっと続いてほしいと思います。それこそが本当に守るべき文化財なのではないかとも思います。そこには「流行産業」というニュアンスもなければ、実は、外国人観光客の姿もほとんどありません。
梅ヶ島温泉も決して景気がいいわけではありませんが、そこには何か、観光客受け入れのあり方についての、大事な示唆があるように思えてなりません。
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