台湾のこと、中国のこと。
台湾と中国の、政治などの話です。
台湾で初めて民選総統を選んだのは1996年のことでした。蒋介石の息子の蒋經國の後を継いだ中国国民党(中華民国台湾の政党)の李登輝総統が大改 革をし、次第に民主化されてきたおかげでしたが、1996年の初の総統選挙には、そのまま李登輝総統の再選が果たされたんですね。
李登輝総統は、「中華民国」=中国の政府という建前を重んじるどころか、中国との「統一」なんて考えは捨てて、台湾という、事実上はすでに独立して存在する自分たちのこの国のためにより良い政治をしようと考え、実行しました。
台湾の中華民国政府にそうした動きが始まったのは、実は蒋介石の後を継いだ蒋經國総統だったわけですが、李登輝総統は古くからの国民党の人たちとは 違って、もとから日本時代も生きてきた台湾生まれの台湾人で、京都大学でも学んで日本の軍隊にもいた人ですから、国民党員だとはいっても本気で台湾のため の政治がしたかったわけです。
ところがそんな李登輝政権に反感を持つ国民党員も多く、2000年の総統選挙までに国民党は分裂してしまいました。それで国民党候補と、国民党から 離党した候補、そして独立派=民主進歩党(民進党)候補の三つ巴の総統選挙となり、漁夫の利を得たかっこうで、民進党の陳水扁総統が誕生しました。
以来2008年まで、民進党の陳水扁総統の時代が続いたわけですが、陳水扁政権発足当時の高い支持率も、2004年からの二期目以降は次第に怪しくなってきて、2008年、今年の総統選挙では、再び国民党に政権を明け渡す結果となりました。
現政権は、その国民党の馬英久総統です。ところがこの馬英久政権の支持率も、一年目にいきなり急落して全然人気がありません。
特に悪かったのは、尖閣諸島は台湾の領土だから日本と戦争してもかまわないと、えらく威勢のいいことを言ってしまったことです。台湾の有権者という のは、いくら国民党を支持するとはいっても日本に親近感をもっていることには何ら変わりはありませんから、台湾生まれでもない馬英久総統が反日的なことを うっかり言おうものなら、当然反感を持たれます。
そのへんが韓国と違って、国全体がひとつにまとまらない台湾らしさでもあります。
また、現代の台湾人は、中国のことを「中国」とも呼ぶようになってきています。当たり前に思われるかもしれませんが、これまでは中国を「大陸」と呼 ぶのが普通だったんですね。あっちは大陸で、こっちは台湾。つまり、大陸と台湾はどっちも「中国」であると、そういう考え方が、中華民国の標準とされて、 学校や新聞やテレビでそう呼んできましたから、一般庶民もそれにならってきたところがあります。細かいことだしどうでもいいだろうというような、そんない い加減な気持ちもあったと思います。
李登輝政権以降、台湾の民主化はかなり進んで、今ではすっかり民主国家になりましたから、政治的には「中華人民共和国」とはかなり遠いところにあり ます。もっとも、経済では、中国に百万人からの台湾人が渡っていて進出企業などで働いていますから、言葉も中国語で通じるどうし、あまり国境を意識するこ ともないでしょう。
中国の高度経済成長があってこそ、台湾企業の躍進もあると見ることもできます。ですから、一党独裁の政治体制が悪いからといって、台湾人が中国の政権を批判したりすることはありません。というかできません。
昨年も、台湾独立派として有名な、台湾の大企業経営者が、中国政府の圧力があってのことなのか、考えを改めるという意味の発表をしたことがありました。巨大な中国に逆らったところでなんの得にもなりゃしない。というのが台湾人の普通の考え方になっています。
実際のところ、中国で問題なのは政治のことだけです。人権弾圧をしているとか、チベット人を虐殺しているとか、新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)の独立問題とか、政治的な問題はきりがないくらいにいろいろあります。
ハリウッド女優のミア・ファーローなども、北京オリンピックに抗議したりしてましたが、「政治以外はいたって正常!」というのが、現在の中国でしょ う。ひとつ悪けりゃ全部悪い、坊主憎けりゃ袈裟までとばかりに、中国の政治問題をもって中国を全面的に否定するなんていうのは流行りません。
経済成長を続ける中国は、輸出産業が莫大な外貨を稼いでここまでやってきて、今度は賃金が高くなるにつれて、内需による成長が続くだろうと言われています。それと同時に、中国の急成長がしばしば恐怖を持って語られることもあります。
その代表じゃないかと思われるのが「地球温暖化」の話ですね。「話」って、事実じゃないかといわれそうですが、どうやら様々な事情があるようです。
地球が温暖化しているというのは確かなようですが、だからといってその原因が人間かというと、どうもそうではないらしいという、別の説もなかなか有力です。
地球は長い間ずっと、ある程度の周期をもって温かくなったり寒くなったりを繰り返しています。例えば広重の東海道五十三次の「蒲原」は雪景色です が、現代の蒲原で雪景色は望めません。テームズ川も大昔は凍ってスケートをしたそうですが、現代では不可能です。昔に比べて温かくなっているというのは事 実のようですが、それも地球規模では何度も繰り返されてきたことであって、今の温暖化だけが人間のせいというのでは、どうにも説明がつかないらしいです ね。
そこで出てくる別の説というのは、いわゆる陰謀説というやつで、西欧を中心とする政治的な思惑がこんな話を作ったのだという説です。
「思惑」というのは恐らく、これからモータリゼーションを迎える中国に石油を大量消費されたくないということでしょう。温暖化云々以前に空気が汚れ るのは間違いなさそうですから、環境保護の立場からも、中国に何億台もマイカーが溢れる事態は、西欧のエコロジーの立場からは誰も望まないはずです。これ までさんざん空気を汚し、動物を絶滅させてきた西欧文明が今ごろになって他国に意見するのはあまりに身勝手ですから、まだこれから豊かになりたいと頑張っ ている新興国にとってはあんまりな話です。
そんなふうに、中国の経済成長は恐れられていたり、嫌われていたりします。中国製品の不買運動もありますし、あてつけがましいエコロジー運動も、ある意味反中国の政治運動なんですね。(同時に反米運動でもあるようですが。)
中国は政治がだめというようなことを書きましたが、人口爆発を抑制する上では、ノーベル賞をいくつやっても足りないほどの偉大な貢献をしています。いわゆる一人っ子政策ですね。
もちろん、一人っ子政策には様々な問題もあるようですが、中国のような一党独裁の政治体制でなければできない善政、というものも確かにあるといっていいのではないでしょうか。
邱永漢先生もおっしゃっていますが、日本が民主主義だからといって、民主的に選ばれた政府がなにひとつ決められない、決めるにしてもやたらと時間ば かりかかって無駄な税金が使われる、それなら中国のように、たとえ独裁であっても必要なことをぱっと決めて実行できる政府の方がましではないか、とまあ、 そんな見方もできるというわけです。
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