イギリス(United Kingdom)という国は、早くから成熟社会と自他共に認められる王国です。筆者にもイギリス人の友人知人が少なくありませんが、彼らと接していると、日本も成熟した先進国ということにはなっているけど、イギリスに比べればまだまだだなと思わされることが多々あります。
ひとつひとつについて詳しく話し出すときりがありませんので、ほんの少しだけ、例を挙げてみたいと思います。
例えば「出生地主義」という国籍に関わる法律の取り決めです。
日本では、外国人が日本で出産しても、その赤ちゃんに日本国籍が与えられる条件とはなりません。つまり、日本で産声を上げたからといって、日本人になれるとは限らないわけです。
それがイギリスやアメリカでは、国内で生まれた子供には国籍が与えられます。
もちろん、親の国籍を選択することもできますから、その子がイギリス人やアメリカ人になるとは限りませんが、イギリスやアメリカでは、国内で生まれた子供に自国の国籍を与えますよという法律になっているわけです。
日本では、皆さんもご存じの通り、そのような「出生地主義」の法律はありません。日本人の父親の子にもなかなか与えられなかったわけですが、最近やっと、(これもまだいろいろ問題はありそうですが)父親が認知すれば日本国籍が与えられるようになりました。
出生地主義のすごいところは、親が子供の国籍を選べるところです。例えば、フランス人やポルトガル人が、自分の子供をイギリス人にしたいと考えたら、とりあえずイギリスに住んで、そこで出産すればよいわけです。
実は、イギリスも含めたヨーロッパの王室というのは、あちこちの国の王室が、他国の王室と親戚だったりもします。
そんなイギリスの王室、エリザベス女王ですが、イギリスの王室のすごいところは、歴史学に照らしてまったく作り話や歴史のねじ曲げがないところだと思います。
まず、イギリス国歌は、「女王陛下に神のご加護を」というやつですが、イギリス国教のトップにある女王が、ちっとも神聖な存在とは思われていないんですね。
まずそこが、日本の皇室とは大きく異なります。
日本で皇室を神聖なものとして祭り上げたのは明治維新なんですが、皇室の「歴史」とされているものには、神話が含まれています。
ヨーロッパで「神話」といえば、ギリシャ神話、ローマ神話など、これは明らかにお伽噺か何かだろうというような内容です。というと言葉は悪いかもしれませんが、要するに科学的でないということです。歴史学、社会学、人類学・・・その他に照らして、ちっとも普通ではないとういうことですね。
同じように、日本の神話も不思議なお話ですね。なにしろ生物学的にあり得ないような生き物だって登場するんですから。
「8つの頭と8本の尾を持ち、目はホオズキのように真っ赤で、背中には苔や木が生え、腹は血でただれ、8つの谷、8つの峰にまたがるほど巨大」(タマタノオロチ)
中国や韓国の歴史観が、歴史学の立場からは正確ではないということを以前にも書かせていただきました。現政権に都合の良い事実を採用し、また誇張して、都合の悪い事実については削除するという歴史観は、しばしば「捏造」という言葉をもって非難の対象ともなっています。
しかしそれは「捏造」という悪い概念で考えるのではなく、「正史」という、中国の歴代王朝がずっとやってきた、政権独自の歴史観というものであるということを書かせていただいたわけです。
一方で日本という国家は、明治政府以降の、天皇陛下をトップとする体制で成り立っています。
対米戦争で降伏して以来は、「大日本帝国」から「日本国」となり、天皇陛下の位置づけも「国民統合の象徴」ということになり、絶対君主ではなくなりましたから、戦前と戦後とでは政治体制が変わったことにはなりますが、国家体制自体はほとんど変わっていないんですね。
そしてこの国家体制を支えているのが、皇室の伝統です。その伝統は「神話」をもとにするものですから、決して歴史学的に正しい史実に基づいたものでなないのです。
このように、歴史学では説明できない、あるいは否定せざるを得ない「正史」というものが、私たちの日本にもあるわけです。
そのようなわけで、日本の「正史」が中国や韓国の「正史」と違うのは、ただ単に、国家体制が古いか新しいかの違いにすぎないとも見ることができます。
日本の国家は明治以降で100と数十年。さらに皇室そのものは2600年を優に超えているという「神話」によります。
中国や韓国は、それが戦後から始まっていますから、まだほんの数十年です。中国の毛沢東も、北朝鮮の金日成も、神格化されることがあるとはいっても、日本の皇室ほど現実離れした「神話」はありませんから、あくまでも人間であり、人類の歴史上、数ある偉人のひとりにすぎないわけです。
一方で、日本の天皇陛下というのは、偉人ではありません。もっと神聖視されることが多いというのが事実です。
というように見てきますと、日本も、中国も、北朝鮮も韓国も、どこも等しく、歴史学に照らして正常なる歴史観をもっていないことになるんですね。
以上の事実を踏まえて、イギリスという国を見てみますと、イギリスの王室には、歴史学者が否定するような「神話」はありません。
むしろもっと人間臭い歴史があるばかりです。
そもそもカトリックを抜けて英国国教になったのは、王様が離婚したからです。離婚を禁じているローマ法王庁との対立があったために、カトリックを脱退するに至ったんですね。ウィキペディアの記述を引用してみましょうか。
–引用開始–
ヘンリー8世はルターの宗教改革を批判する「七秘蹟の擁護」を著した功で、教皇レオ10世から「信仰の擁護者」(Defender of the Faith)の称号を授かるほどの熱心なカトリック信者であったが、後にキャサリン王妃との離婚およびアン・ブーリンとの再婚を巡る問題から教皇クレメンス7世と対立。側近であるトマス・クロムウェルの補佐を受け、1533年には上告禁止法を発布し、イングランドは帝国であると宣言し、教皇クレメンス7世に破門された。1534年には国王至上法(首長令)を発布し、自らをイギリス国教会の長とするとともに、ローマ・カトリック教会から離脱した。
(Wikipedia日本語版より)
–引用おわり–
イギリスの王室の歴史というのは全体にこの調子で、なにもかもあからさま、あけすけになっています。つまり、歴史学者が首をかしげるような「神話」もなければ、日本や韓国にあるような「正史」もないのです。
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